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今日も龍くんの帰りは遅かった。
コンコン、と控えめにドアがノックされる。グループデートの前に気まずくなってからは夜部屋に来ることもなくなっていたのに。
なんだか前よりも妙にドキドキしてしまって、返事ができない。
カチャリとした音が聞こえて、咄嗟に目を閉じる。ドアが開いた音だ。入っていいなんて言ってないのに。
ゆっくり近づいてくる足音に、鼓動はさらに激しく鳴り出す。
「……春菜、寝た?」
雷の時のことや一緒に勉強した時のことが恥ずかしくて、つい寝たふりをしてしまっていた。また手を繋いで眠ることになったら私の心臓が持つかわからない。
「なんだ。寝ちまったか」
龍くんの声が近い。ベッドわきにまで来ているみたいだった。
「……春菜」
龍くんの手が私の頭を撫で、前髪をかき分ける。龍くんに頭を撫でられるのは好きだった。
額に何かがくっつく感触があった。
(……っ!)
もしかして、今、額にキスした?
「……おやすみ」
龍くんがそう言うと、彼の足音は遠ざかり、ドアが閉まる音がした。
隣の部屋に龍くんが入った音がしてからゆっくり瞼を開き、起き上がる。
「な、なに今の」
胸は激しく鳴っていた。
ベッドの中で抱きしめられるより、手を繋いで眠るより、動揺している。
私が本当は起きているのを知っててからかった?
でもまさか、そこまでして。
混乱して、目が回る。
結局、今日は眠れそうになかった。
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