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09.最悪の展開
「……春菜? 春菜~?」
顔の前で手が揺れる。美玲が手を振ってると気づいて、ハッとした。
「え、あ、なに?」
「どうしたのぼーっとして」
「……あ……別に……」
昨日の夜、龍くんにキスをされた。
額にだけど、その感触は鮮明に残っていて、朝からずっと龍くんのことを考えている。少しかさついていて柔らかい唇の感触。一瞬だったけれど、まだ額に残っているみたいだった。
どうしてあんなことをしたのか、ずっと考えている。
「春菜、あのさ」
美玲がやけに真剣な顔をしているので、私は頭の中にいる龍くんの存在を振り払った。
「……私、彼氏と別れちゃった」
「……え!? 本当に?」
「うん。なんか怒られることばっかりだし、束縛すごいし、もういいやと思って」
「……そっか」
付き合っていてあんなに幸せそうだったのに。
「でもね、実は気になる人ができたんだ」
「そうなの!?」
展開が早い。私としては、そんなにすぐ好きな人ができるのは羨ましい。美人の美玲の周りには素敵な男の人が多いということかもしれない。
「その人とはいい感じなの?」
「うーん私の完全な片思いだけど、モノにしてみせる!」
「か、かっこいい……」
私にはない自信だ。でも、美玲が元気になってくれてよかった。
(あれ? 美玲がフリーになったってことは……)
新田くんのチャンス?
でも美玲には好きな人がいるみたいだし……結局またどっちを応援すればいいかわからない、複雑な状況に変わりはなさそうだった。
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