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プロローグ
「りゅうくん、りゅうくん……!」
私は涙を流しながら遠ざかっていく車を追いかける。
涙で目の前が滲んで、黒い車でさえぼやけてしまう。
はやく、はやくと必死に足を動かしても、りゅうくんの姿は遠ざかるばかりだ。
「きゃっ……!」
そのうち、足がもつれて転んでしまった。
スカートから剥き出しの足が地面にこすれる。
「はるちゃん!」
遠くからりゅうくんの声が聞こえる。
けれど彼はもう私の隣には来ない。
起き上がろうとすると膝の痛みに顔を歪める。膝小僧はこすれ、血が滲んでいてさらに涙が込み上げてくる。
くちびるを噛み締めて涙を手で拭い、顔を上げる。
「りゅうくん……! またね……!」
手を振ってくれるりゅうくんに、めいいっぱい手を振った。
遠ざかる黒い車は、やがて見えなくなった。
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