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自覚した途端、ベッドに深く沈み込んでいくような感覚に襲われて美雨は呻く。
「き、気づきませんでした……。では、もしかして今日の水族館も? 事故以来行けていなかったから、だけでなく? あの写真の思い出だから?」
「急に察しが良くなったな。ああそうだよ、当然だろう」
「当然……」
目を丸くして嶺人を見つめ返す。自分が見落としていただけで、この人は、今まで一体どれほど心を砕いてくれていたのだろう、と震えが走った。
嶺人がそっと手を伸ばして、美雨の手を握る。存在を確かめるようにしっかりと。
「学園祭で美雨が美波の妹と知って、それから俺は美雨に近づこうと思って、色々と画策した。つまり、俺が好きになったのが絶対に先だ。この結婚に美雨の事故は関係ない。悪いが、美雨の足がどうなっていようと俺の気持ちは今更変わりようがないんだ」
重なった手の甲に軽く爪が立てられる。決して痛くはないけれど、自身を確実に刻み込もうとするような仕草だった。
「で、ですがっ、入院中に美波姉様とお話ししているのを聞きました。責任を取ると。美波姉様にも謝罪されていましたし」
「俺と美波は壊滅的に馬が合わない。あいつは美雨を本当に大切にしているから、俺みたいな男が美雨の夫になるのが心底嫌だったらしい。だから謝罪した。美雨の家庭教師をしているときもものすごく邪魔されたんだぞ」
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