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「そんなことが……? では、責任を取ると仰っていたのは……?」
美雨の追及に、嶺人は口をつぐんだ。だがじっと見つめ続けていると、不承不承といった態で口を開く。
「それはそのうちにわかる。俺はただ……美雨を危険な目に遭わせた奴らを許すつもりはない」
奥底に酷薄なものが流れる音吐だった。知らずぞくりと首筋が粟立つ。
「一体どういう……」
意味か、と続けようとして美雨はギュッと抱き寄せられた。
「美雨が気にすることじゃない。それより誤解は解けたか? 俺が愛しているのは美雨だけだ。今までも、これからも。——永遠に」
囁きは誓いに似て、背に回された腕は縋るようだった。しっかりとした温もりに包まれ、美雨は目を閉じる。
(全部、私の勘違いだったのね……)
詳らかにされた事実がじわじわと胸に沁み入るにつれて、涙が込み上げてくる。
ぽろっと雫が目尻を転がると、嶺人がぎょっとしたように聞いた。
「泣くほど嫌だったか?」
「そうではなくて……安心して……」
濡れる頬を拭って、美雨はそっと瞼を上げる。涙に滲んだ視界に大切な人の顔が映る。ああ、と息が唇からこぼれた。
「私、まだ嶺人さんを好きでいてもいいですか?」
目を瞬けば涙が晴れて、こちらを見据える嶺人の表情がよく見える。彼は本当に嬉しそうに微笑んで、そうっと美雨の頬を撫でた。
「いいに決まっている」
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