そして二人はいつまでも幸せに

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「はい、ありがとうございます」  チン、と互いのドリンクのグラスを触れ合わせる。甘酸っぱいカクテルをちびちび飲んでいると「ねえ、ところで……」と美波が辺りを用心深く見渡し、忍び声で囁きかけた。 「このラウンジに入る前に、美雨に話しかけていた男、知り合い?」 「いえ、違います」  実は、美波とラウンジで出会ったのは偶然だった。パーティーの終わった後、人酔いしていた美雨にしつこく見知らぬ男が話しかけてきて困っていたところを、美波が颯爽と助け出してくれたのだ。 「バーで飲まないか、といきなり誘われて。変ですよね?」 「ナンパじゃない? 結構かっこいい顔してたわよ」 「……そうでした?」 「美雨の旦那様ほどじゃないかもね」  美雨のそばにはいつも嶺人がいるので、美の基準が狂い始めている。まずいかもしれないわ、と眉間に皺を寄せる美雨をよそに、美波はラウンジの入り口を見つめ小さく呟いた。 「……なるほど、そういうわけね」  ■ ■ ■  美雨が美波とラウンジにいる頃、嶺人はクルーズ船のスイートルームを訪れていた。  この部屋の主である、岬グループの元帥——岬源一に呼び出されたのである。 「嶺人、お前の結婚について話がある。儂の許しを得ずに勝手をしたな」
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