そして二人はいつまでも幸せに

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 泡を食った源一が立ち上がる前に、限られた人間しか入れないはずの部屋のドアを難なく開けて、櫻井が姿を現す。その足元には、結束バンドで手足を縛られた男が転がっている。ラウンジで美雨に声をかけた男だった。 「な……っ!?」 「調べはついています。十年前の事故で、叔父の不義の子を担ぎ上げようと吹き込んだのはお祖父様だと。だがいかんせん十年も前のことで証拠がない。ところが今回、俺の妻を攫おうとしていると話を聞きつけましてね。せっかくなら現行犯で尻尾を捕まえようかと」 「何だと!? お前、あの娘を囮にしたのか! 口では何と言おうと、結局は駒扱いではないか!」  源一の非難に、嶺人は不快げに眉を寄せた。 「言いがかりはやめてください。美雨には複数の護衛をつけておいた。彼女は何も知らなくていい。——さて、あなたにはもう退場してもらいましょう」 「おい触るな! 儂は岬グループ元帥、岬源一だぞ!」  嶺人に両腕を捕らえれて喚く源一を、冷ややかに睥睨する。嶺人は躊躇いなく手首を縛り上げ、源一を立たせた。 「もう時代は変わっています。そんなことにも気づけないほど耄碌しましたか。次の停泊地で私の手の者が待っていますから、大人しく舞台から下りてください。それと」  源一の胸ぐらを掴み上げ、嶺人はおどろおどろしく囁いた。 「次に美雨に手を出そうとしたら海底に沈めるからな」  
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