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ルートツ・バイラス
私が異世界転移?してしまった体の名前はルートツ・バイラスというらしい。
名家バイラス家の次男坊で長年質の良い騎士を輩出し
てきた貴族の息子だ。
嫡男でもない彼はのんびり楽しく暮らしていたようだ。
現在は17歳、騎士学校に通う見習い。14歳より入学したので今年で卒業である。
で、ここまでの記憶を確認した私はなんだか不思議が気分になった。
彼は私じゃないのにずっと17年生きた自分自身のように感じられるのだ。
そう、まるで自身の人生を追体験したみたいな、そんな気持ち。
よくわからない。でも、不思議とルートツの記憶と経験が馴染んでいくのを感じる。
それこそ自分のことのように。
もしかしたらルートツは別の世界線があった時の私なのかもしれない。パラレルワールド説。
だったら世界が変わっただけなのではあるまいか?
私は何も変わっていない。性別と容姿が変わっておきながら何も、は言い過ぎなのかもしれないが。
まぁともかく今生きているのは私ではなく、ルートツなのだ。
ん?つまり私じゃなくて俺ってことになるのか。
うーん。なんだか面白いことに巻き込まれてしまった実感が今になってひしひしと湧いてきた。
一周回ってこの世界を遊び尽くしても良い気すらしてくる。
気すらしてくるっていうか、遊び尽くしたっていいんじゃないか?
記憶によれば今日は久しぶりの休暇で街を散策しているところだったらしい。
それなら、このまま続行と行こう。
この世界に来て初めての街だ。どんなものがあるのか見て回ろう。
考えるのは明日でもいい。だって衣食住の心配なんていらない。なんたって寮暮らしだし。
そう俺は気楽に考えて、初めての異世界を堪能するために、ルートツ・バイラスとして歩き始めたのだった。
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