第一章

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始のそのひどい言い方に麻耶は心の中でため息をつきながら、「お疲れ様です」とだけ返した。 「水崎さん、次の見学のお客様、私も見ていていいかな?反応を直接確認したいから」 「はい。もちろんです」 麻耶は芳也の声に慌てて立ち上がると、ニコリと笑顔を向けて頭をさげた。 「邪魔はしないように秘書と見学者を装って座ってみているからね」 ふんわりと笑った芳也に、麻耶は目を奪われた。 (うわー本当に本から抜け出てきたみたいに格好いい……。あのきれいな人は秘書なんだ……秘書さんって感じだな) 麻耶はみょうに納得すると、芳也たちの方に近づき、 「では、ご新郎様ご新婦様のお出迎えに行ってまいりますので失礼いたします」 そう声をかけると麻耶はチャペルを後にした。 大聖堂から続く階段の真ん中辺りで麻耶は振り返ると、真っ青な空とグリーンの中に幻想的に佇む大聖堂を見上げ大きく息を吸った。 (がんばらないとね……) 麻耶は時間の10分前には入り口に待機していた。 (あっ、今日の見学のお二人は入籍済のお二人か……) 山口 隆 ・ 沙苗 様 程なくして現れたお二人を案内して大聖堂に麻耶は向かっていた。
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