第一章

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第一章

「俺は誰も愛さないーー」 その残酷すぎる言葉を伝えられても諦められないこの気持ち。 それでもいいから、そばにいたいーー。 でも、それはあなたを苦しめているだけなの?? どん底にいた私を助けてくれたあなたは、本当は優しい人だと知っている。 あなたには幸せになって欲しいからーー。私はあなたから去ることに決めた。 最後に望むのはキスひとつ ※※※ 木々の緑が生い茂る大きなチャペル。 風で揺れる木々の音と鳥のさえずり。 幸せな人の集まる場所。 一生に一度の主役の一日を……。 最高の瞬間をあなたに……。 そんな自社のCMを頭の中で思い浮かべながら、麻耶は真っ青な空を見上げた。 しかしそんな気分も吹き飛ばすように声が飛び、麻耶は現実に引き戻された。 「水崎!この花の発注終わっているか?」 「はい!大丈夫です!主任!」 「麻耶ちゃん、この模擬挙式のヘアメイク押さえてある?」 「美樹さん、大丈夫です!」 麻耶は忙しく掛けられる言葉に、走りだしながら答えると慌てて腕時計に目を落とした。
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