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……でも、こんなことになっているのは、わたしだけじゃない。唯菜ちゃんも同じなんだ。
そうだよ。わたしだけこんなふうにめそめそしてどうするの。
唯菜ちゃん、接客なんてはじめてのはずなのに、すごくがんばってた。
わたしは知ってるから。あんなふうに、お客さんの前で笑顔を絶やさずにいるっていうのが、どれだけ難しいことなのか。
わたしなんか、ちょっと知らないことを聞かれたり、ムリなお願いをされただけで、すぐにオロオロしちゃって、もうお店のお手伝いなんかしたくないって何度思ったことか。
でも、唯菜ちゃんの笑顔は、決してムリして笑っているふうでもなく、本当に自然に笑っているように見えたんだよね。
……あれっ? ひょっとして唯菜ちゃんの方が、わたしよりも接客業に向いてる?
お母さんたちも、唯菜ちゃんが自分の娘の方がいいって思っていたりして。
うぅっ、それはちょっとショックかも……。
ああ、もうっ。悪い方にばっか考えるな、わたし。
とにかく、早く晩ごはんを食べてお風呂に入って、さっさと寝よう。
そうしたら早く明日が来て、ひょっとしたら元に戻っているかもしれないしね!
そうだよ。早くこんな悪夢から目覚めなくっちゃ。
わたしは目の前のビーフシチューを素早くお腹の中に収めると、さっと食器を洗い、わたしんちの倍はありそうな広々としたお風呂へと向かった。
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