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おそるおそる声の方を見ると、クラスメイトで、わたしの幼なじみの白沢爽がいた。
「実はね――」
「別に? なんにもないよ?」
爽に相談しようとしたら、にこにこ笑顔の唯菜ちゃんが、わたしの言葉にかぶせてきた。
唯菜ちゃんの方をちらっと見ると、『絶対に言わないでよ』って目が主張してる。
爽なら力になってくれると思ったんだけど……。
「早く音楽室行かないと、授業はじまるぞ」
「そ、そうだね」
「ちょっと待って心……唯菜。教室にペンケース取りに戻るんでしょ?」
音楽室へ向かおうとするわたしの腕に、唯菜ちゃんが自分の両腕をがしっとからめる。
「あ……あー、そうだった、そうだった」
「もう、唯菜ってば、意外とおっちょこちょいでかわいいとこあるんだからぁ」
ほら行くよ、という唯菜ちゃんに引きずられるようにして、わたしは教室に向かって歩きはじめた。
「あ、そうだ心春。今晩、また心春んちだから、よろしくな」
という爽の声に、「うん、わかったー」って振り返りながらいつも通り返事をして。
……だから、わたしが答えちゃダメなんだってば!
「いや、えっと、その……」
あたふたするわたしを見て、爽が首をかしげている。
「今晩ね。わかった。待ってるね」
「おう。んじゃ、よろしくな」
唯菜ちゃんに向かってひらっと手を振ると、今度こそ爽は音楽室の方へと歩いていった。
ホッ。唯菜ちゃんがうまく話を合わせてくれてよかった。
「――で?」
ものすごく低い声が、隣から聞こえてくる。
唯菜ちゃん、やっぱりいつもとなんかキャラが……。
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