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「唯菜ー、教室行こ」
「あ、う、うん……!」
音楽の授業が終わると、さっそく杏ちゃんたちに声をかけられ、慌てて持ち物をそろえて立ちあがる。
唯菜ちゃんらしく、唯菜ちゃんらしく――お経のように、何度も頭の中で唱える。
「待って。あたしも一緒に行くー」
「へ⁉」
にこにこ笑顔の心春――というか唯菜ちゃんが、わたしの隣に立った。
『なんで心春が?』っていう険しい顔の杏ちゃん凛香ちゃんと、笑顔を崩さない唯菜ちゃんに左右を挟まれ、固まるわたし。
いやいや。この状況は絶対違和感しかないって!
唯菜ちゃんが、杏ちゃんたちといつも一緒にいるのは知ってるけど、ちょっとは状況を考えてよぉ。
『お願いだから、もっと心春らしくして』って唯菜ちゃんに言いたいところだけど、今はそんなことも言えないし……。
「えっと……じゃあ、みんなで戻ろっか」
笑顔を貼りつけてわたしが言うと、「別にいいけどー」と杏ちゃんたちもなんとか納得してくれたみたい。
むしろ『わたしはひとりで大丈夫だから、三人で行って』って言いたいところなんだけど……。
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