現実へ溺れる

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私は今の生活に絶望していた。今年で50歳になったが、毎日上司から理不尽な怒りを受け、飲み会には毎回無理やり連れていかれる。 30年間愛した妻には、3年前に浮気されていたのがわかり、離婚し、子供もいないのでマンションに一人、飲み疲れては帰る生活をしていた。 いつの間にか妻に、浮気相手への振込がされており、貯金もまったくなかった。 そんな生活をしていたある日、私は満員電車に乗って、会社へと向かっていた。 ガタンガタン……ガタンガタン………… 「この人、スリです。」 私の横にいた人がそんなことを言った。私を指さして。 一斉に周りの顔がこちらを向く。 は………。私はしていない。 片手は吊り革、片手はカバンを持っている。 「勘違いだと思います。だって……」 と吊り革を離し、スーツのポケットが空だということを証明しようとした。 「俺の黒いサイフを盗みました。」 何かある。俺はつい手にとって見てしまった。 黒いサイフをだ。私のではない。 「勘違いだ。私はやっていない。」 冷静に。 「返せ。」 私はすぐ返そうとしたが、手を捕まれ、返すことができない。 ハメられた。まずい。これはまずい。 「返せよぉ!」 掴む力が強く、手は何もできない。 「だからぁわぁたしはしていなぁい!」 「ごまかしたって無駄だ。」 「なんで抵抗してるんだ。」 「早く返せ」 私は周りの奴らに捕まれ、身動きが取れなくなった。 やばい。どうすれば。まずい。どうすればいい。 駅につき、私は掴んでるやつ、ハメたやつと外へ出された。 こいつらを振り払い、ぶん殴って逃げたい。しかし、そんなことをしたら完全に犯罪。 もう終わりだ。 私はなすすべなく警察へ届けられた。 その日は事情聴取を1日し、なんとか罰金で済ますことができたが、三年間のためてきた貯金もほぼなくなってしまった。 翌日、会社へ行くと。上司に呼び出された。 「君はクビね。犯罪したもんね。」 は。 「前からいらないと思ってた人が多かったみたいよ。酒臭いしね。」 そんなことを言っている上司は笑っていた。私は本能的にこいつがすべて仕組んだことを分かっていた。 殴れ。会社なんかぶっ壊せ。頭に浮かぶその言葉。しかしできない。そんなことをしたら私はおしまいだ。 帰るしかなかった。 私は帰りの電車、意識もなくスマホを見ていた。 下から上へ指をただ動かすだけの作業。 ふと目が止まる。 「世界一自由でリアルなVR機ゲーム」 この記事をタップしていた。そしてまた作業をし始める。 「自分の想像したままの世界で大暴れしよう。」 ゲームというのは今まで限られた状況の上でしか自由ができなかった。 しかしこのゲームは自分の想像の世界で自由になれるというのだ。 あの殴りやつ、あの殴りたいやつ、あんな殴りたいやつを好きな時に殴れる。 私はすぐに購入できる場所へと移動し、値段を確かめる。 少し値を張るが私にはこれしかない。生きる希望だ。 購入のボタンを押した。2日後に届くらしい。 2日後 やることのなかった私はただひたすらに絶望を体験していた。 ついに来て、ダンボールをぶち開け、箱を開け出てきた。 すぐさまコードなどをつなぎ、電源をつけ、頭に装着した。 『死んだら終わり』 目の前に文字が見えた。 『想像して、世界』 私は想像した。まず妻の浮気現場を。 目の前に妻と浮気相手がベットにいる様子をドアを開けて見ていた。 とてもゲームだとは思えない。現実と全く変わらなかった。想像のまんま形になっていた。 私は歩き、浮気相手を妻から引っ剥がし、ぶん殴った。ぶん殴った。ぶん殴った。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。 そいつは悲鳴を上げていたが、動かなくなった。 妻は 「ごめんなさァい!今後絶対にこんなことはしないはぁ!」 泣きながら私にすがりついてきた。 次だ。 私は、前の電車でのことを思い出した。 「この人、スリです。」 私は、黒いサイフを見ていた。 周りの奴らが、取り押さえてくるが、そいつ等を振り払い。 まずハメたやつを殴る。ぶん殴る。ぶん殴る。ぶん殴る。ぶん殴る。ぶん殴る。ぶん殴る。殴る殴る殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。 気持ちがいい。 そして周りの奴らも一人づつ殴る。 殴る。 殴る。 殴る。 殴る。 「私はやってないぞぉー!こいつにはめられたんだァー!」 私は叫んだ。気持ちがいい。とてもいい。 よし次。 上司の部屋へと来ていた。 上司の私が首になっ理由を聞かされていた。 「うるさぁい!」 机へ顔を落とし、鼻血を確認しようとしているところを殴る。 倒れた。 私はその上に乗り、動けないようにし、ひたすら殴って動かなくなった後。 上から下へと蹴りを何発も入れてやった。 机もなぎ倒し、ひたすら殴り、壊した。 皆が作業しているところへ行き、机もパソコンも全部。全部。全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部。 ぶっ壊した。 私は上司の部屋へと戻り、椅子に座った。 私は最強なんだ。
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