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 僕は、以前にも増して仕事に打ち込むようになった。  ピートにおやつをあげて喜ばせることが、今は生きがいの一つになっている。そのためには、きちんと稼がなくては!  もう一つ、僕の生活にはりを与えてくれる存在ができた。  ピートと同じ型のペットロボットと暮らしている人々のコミュニティで、趣味や考え方の合う女性と知り合い、何度か会ううちに結婚を考える間柄になったのだ。  彼女が僕の家に来るときは、必ず自分の相棒のリッキィを連れてくる。  ピートとリッキィも、僕たちを真似するように、いつのまにか仲良くなっていた。電子音を発しながら、二人だけで何か秘密の話をしているように見えることもある。  ある日、僕がピートとリッキィにおやつをあげていると、苦笑いを浮かべながら彼女が言った。 「リッキィを手に入れるときに、少し高過ぎるかなと思ったの。でも、完全自己解決型で永久保証ということだったし、この先出費する必要がないのならいいかなと思って買うことにしたのよ。 ただ、販売元はそれで儲かるのか、突然倒産するんじゃないかと心配だった――。何のことはない、このおやつを売ることできちんと商売になっていたのね!」 「そうさ。コミュニティのみんなも言ってたじゃないか。最初の定期検査が終わった頃、修理技術者に勧められたり、販売元から連絡が来たりして、おやつを買うようになったって――。僕たち、うまいこと販売戦略にのせられちゃったってことなんだよ」 「そうね。でも、食べる姿が本当に可愛いから、おやつの購入を辞める気にはならないわ」 「ああ。必要ないことがわかっていても、もうおやつをあげずにはいられないんだよね」  僕たちは、とても幸せな気持ちで、ピートとリッキィを眺めていた。  二人は、おやつに満足したようで、体を寄せ合いながら日だまりにたたずんでいた。  でも、僕は、実は新たな気がかりを抱えていた。  初めておやつを与えた頃に比べ、最近は明らかにピートがおやつを欲しがる頻度が高まっていた。もちろん、ピートが要求するからといって、必ずおやつをあげなければならないというわけじゃない。  ただ、おねだりをしに来たときにおやつをあげないと、ピートはとても悲しそうな顔をする。切なげな電子音を発することもある――。そんなピートは見たくない!  結果、ついついおやつをあげてしまう――。  今日だって、きっと一時間もしたら、ピートはリッキィと一緒に僕たちのところへおやつをねだりに来るはずだ。  そして、何もかも許したくなるような、甘く愛らしい声でこう言うんだ。 「オナカ ガ シュイタヨ!」
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