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⑥
機能の拡張は無料だし、お試しのおやつもくれるという。
断る理由などない。
僕は、即座に「お願いします」と言った。
すると、修理技術者は、僕の膝に顔をすり寄せ甘えていたピートを、ひょいっと抱き上げ強制終了させた。
そして、いくつかの工具をケースから取り出し、閉じたままになっているピートの口をちょこちょこいじっていた。
それがすむと、今度はしっぽの下をカタカタ鳴らして何かを取り付けた。
彼は、工具をケースに片付けると、再びピートを起動した。
ピートは、ちょっと驚いたように目を輝かせ、ゆっくり口を動かし始めた。
閉じたり開いたり、開いたり閉じたり――。
動かし方を確かめているようだ。
「ピューーイ!」
突然、今までは体のどこかにあるスピーカーから流れ出ていた電子音が、小さく開けたピートの口の中から聞こえてきた!
ピートが、しゃべっているような気がした。なんて可愛らしいんだろう!!
修理技術者が、「おためしおやつセット」の袋を僕に渡してくれた。
袋からタブレットを一つ取り出し、指でつまんで振ってみせると、ピートは僕の前に来て、物欲しそうに口をもぞもぞと動かした。
「ピート、いつもありがとう。ほら、ご褒美のおやつだよ!」
ピートがパカッと口を開けたので、僕はその中へタブレットを押し込んでやった。
ピートは、口をもぐもぐ動かして、嬉しそうにタブレットを飲み込んだ。
「おやつは、超小型の電池のようなものです。ピートの体の中には、そこから電気を受け取る仕組みがあります。このおやつは、ちゃんとピートのエネルギーになるんですよ。
使い終わったおやつは、しっぽの下に取り付けた箱の中に排出されますから、取り出して保管しておいてください。定期検査のときに回収しますので――」
作業を終えた修理技術者が、そう言い残して出て行ったドアを、僕は喜びに浸りながらしばらくの間見つめていた。
絶対に無理だと思っていた「ピートにえさやおやつをあげる」という夢を、かなえることができたのだ。
僕と一緒に、玄関まで修理技術者を見送りに来たピートが、無垢な瞳で見上げながら僕の足に体を押し付けた。
「ピート!」
僕はそう叫んで、力いっぱいピートを抱きしめた。
僕の腕の中で体をもそもそさせながら、ピートが天使の声を思わせる愛らしい電子音でささやいた。
「オナカ ガ シュイタヨ!」
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