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「家族の中に図々しく入ってきたじゃないか。なにが橋渡し役だよ。俺の嫁を手籠めにしやがって」
「そうだそうだ。俺ん家なんて、俺の居場所を奪ったんだ。仕事でいない時を見計らって、入り浸って。朝から晩まで、こいつのことしか話題にならねえ」
「俺のところは祖父母がやられた。こいつが親切にしてくれたからって、老後の金を渡してやがった。二軒先のばっちゃまも、五軒先のじいさんもやられたって言ってた。金がないから施設にも入れねえ。嫁と子も、話が違うと逃げてった」
「しらねえよ。それは、相手が悪いだろうが」
「そもそも、おまえがあちら側の世界から来なければよかったんだ。俺たちは平和に暮らしてたっていうのに、おまえのせいで滅茶苦茶だ」
「なんだと、てめえっ」
残りの時間は、会話もままならない阿鼻叫喚。
女は席から動かないまま、その光景を、ゆったりと眺めていた。
女はアラームも鳴らないストップウォッチを止め、ヘルメットを被った。
「終了です」
銃を構え、狙いを定める。
パンッ。
「ウギャアッ」
パンッ。
「ギャラアッ」
パンッ、パンッ。
軽快に打っていき、残った二人の前まで進むと、カチカチと音を立てた。
「私のリボルバーは五発まで、です。お二人は生き残りました。気の済むまでどうぞ」
言い終えた女は、ターゲットとリーダーの男を残して席に座り、ヘルメットを脱いだ。
二人は顔を見合わせて、リーダーの男がターゲットを殴る。
「いてええっ」
「おまえのせいで、全てが滅茶苦茶だっ」
「なんだって?俺は悪くねえ」
「まだ言うか。現状を見ろよっ」
「あんたのせいだろうがっ」
歯が抜け、血を吐き、骨の折れる音と、悲鳴が反響する。
女はその光景を最後まで見守っていた。
五分もしないうちに勝敗が決まった。結果は、強い信念を持ったリーダーの勝ち。
若さの勝ち。
ターゲットは立ち上がる気力もなく、か細い息をして横たわっていた。ターゲットはもう生きられないだろう。
パチパチパチパチ。
そんな二人に、女は立ち上がって拍手を始める。
十秒ほどたっただろうか。
「それでは、さようなら」
女は、先ほど回収しておいたナイフを投げつけ、リーダーの心臓に命中させた。
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