第2話 隠したくなるのは

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「はい?」  足を止めて全体を見渡していた僕に、千鶴さんが合図を出す。  どうやら一度外に出るらしい。  作戦会議でもするのだろうかと、僕は無言でうなずいて階段を下りた。  千鶴さんは今もなお無表情のままだ。 「どうしました?」  外に出て、千鶴さんに問いかける。  時間は午後二時を過ぎたところで、今日も今日とて非常に暑い。 「いや、パッと見た様子だと、みんなちっとも楽しそうじゃないなって思って」  不思議そうな顔で千鶴さんは言った。  遊んでいる人たちの表情を見ていたわけではないが、なんとなく言いたいことはわかった。 「当たってない人はしかたないとしても、全体的にそんな感じでしたね」 「だよね? 大当たりしてるっぽい人も、淡々とボタンを押してるだけっていうか、あの回ってるやつを見てる感じじゃなかったよ」  友達どうして来ているのか、ふたりでわいわい楽しみながら遊んでいる人もいたけれど、多くの人は一人で黙々と手を動かしているだけだった。  スマホで動画やマンガを見ている人もいて、あれは確かに不思議な光景だった。
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