第2話 隠したくなるのは

30/104
前へ
/288ページ
次へ
「すごい!」  おそらくできて当然なのだろうけど、なんとか狙うべき絵柄を止めることができた。  真ん中と右のボタンは適当でいいらしいから、とりあえず一ゲーム終わらせる。 「下にこの白いのが止まるのが普通で、これ以外になるとチャンスらしいです」 「ん、よくわかんない。とりあえず私もやってみるね」  メダルを3枚入れて、レバーを叩く。  これを何度も繰り返すわけだけど、あらかじめメダルを入れておけばボタン一つで準備は整うとのこと。 「おーー、速い速い」  リールに顔を近づけるようにして、千鶴さんは言った。  その横顔はとても楽しそうで、いつも通りとてもかわいい。 「あれ?」  エレベーターの行き先ボタンを押すときのように、人差し指で千鶴さんは最初のボタンを押した。  しかし、狙っていたはずの白い図柄は止められなかった。 「えっと、ちょっと遅かったみたいです。ですけど、気にせず他のも止めちゃってください」 「真ん中とか右で白いのを狙ってもいいの?」 「いいと思いますけど、止まるかどうかはわかりませんよ」  説明書によると、白い図柄が三つ揃ったら大当たりにつながるらしいから、そう簡単には止められないのだろう。  こんな感じだから、僕たちは周囲と比べて一ゲームに費やす時間がとんでもなく長くなっている。
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加