第1話 引き寄せるものは

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「誰でも簡単にできる遊びってことで、ババ抜きがいいんじゃないかとか、店員に勝ったらなんらかのサービスが受けられるようにしたらいいんじゃないかとか、いろいろ意見が出ました」 「取り入れる気満々だね」 「経費はかかりませんし、他にはない取り組みでしたからね。社長もおもしろ半分でやってみたらって感じでした」 「結局どうなったの?」 「試験的にやってみようと、ババ抜きが採用されました。飲み放題を注文した四人以上の客限定で、店員に勝ったら食べ物ひとつサービスってことになりました」  ババ抜きだから、店員が最後まで残ったら客の勝ち、というルールだ。  店員が真っ先に勝ち抜けることもあったけれど、そうなるとあとは客たちが勝手に盛り上がって、負けたやつがおごりみたいな流れになることも多かった。 「お祭りみたいな感じだね。サイコロとかコイン落としとか」 「まさにそれですね。店長からは、ババ抜きの練習しとけって言われました」 「実際のお客さんの反応はどうだったの?」 「最初は僕たちを含めて従業員の友達を呼んで試してもらった感じでしたけど、少しずつチャレンジしてくれる人は増えましたよ」 「子ども連れとかも楽しめるもんね」 「はい。それに、意外と中高年のサラリーマングループなんかも懐かしいってことで、客だけで遊んでることもありました」
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