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「それなんだけど、蓮くんにまかせるよ」
「いえ、探偵業はできませんよ。喫茶店の営業時間を伸ばすくらいなら平気ですけど」
探偵業の受付は午前十時から午後七時までで、喫茶店はその間の十一時から三時までの営業となる。
探偵を身近に感じてもらうための喫茶店なので、探偵の依頼を受けて外出する際は喫茶店が休業となる。今回はその逆パターンというわけだ。
「あぁ、そういう運営もありか」
僕の発言が予想外だったのか、あまり見ない表情で千鶴さんは言った。
はて、千鶴さんはどういうつもりだったんだろう。
「いっそ、夏期休暇ってことで蓮くんもゆっくりしたらいいんじゃないかって、そう思ってたんだけど」
僕が何も言わなければ、千鶴さんは一定の間を持って話を進めてくれる。
なるほど、そういうことですか。
「来週でしたっけ?」
こう言いながら、僕は机の上の卓上カレンダーを手に取った。
今日は八月二十八日で、来週はもう九月だけれど、気候的に夏が終わる気配はないので、夏期休暇という千鶴さんの表現は間違っていない。
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