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「……ちょっとやりすぎたかな」
僕がひとりでどうしたものかと考えていたら、千鶴さんは意味深な言葉とともに立ち上がって、休憩用のテーブルに移動した。
ひとまず僕は、そんな千鶴さんを目で追うだけで動かないことにする。
「こんなにスムーズに話が進むとは思わなかったよ」
ときどき見せる困ったような笑顔で、千鶴さんは言った。
距離が近くなって、千鶴さんの顔がよく見える。今日も相変わらずかわいい。
「何の話ですか?」
千鶴さんが何を言っているのかわからず、僕はストレートにこう聞くことしかできなかった。
ここまでの話を振り返ってみても、特におかしなことはなかったはず。
「うん、まぁ、そうなるようにしたから当然なんだけど、さっきまでの話は全部うそなんだ」
「はい?」
「だから、取材に行くって話。あれは全部作り話だから、今の話は全部なかったことにしていいよってこと」
そんなことがあるのかと、僕はまたしても言葉を失うことになった。
千鶴さんとしばらく会えなくなることが回避できたのは嬉しい限りだけど、どうリアクションを取ればいいのかがわからない。
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