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「いや、ごめんね。蓮くんはきっと、本当の話だと思って聞いてくれてたよね」
僕が千鶴さんを疑うことはないから、千鶴さんの見立ては正しい。
しかし、千鶴さんが謝る必要はない。僕が勝手に信じただけなのだから。
「それはもう。千鶴さんがいない間どうしようって、割と真剣に悩みましたよ」
「それに関しては、実際どうするつもりなのか、気になるところではあるんだけど」
僕の思惑を伝えるわけにはいかないから、ここは話題を変えよう。
今の話が現実になる可能性はあるだろうけど、千鶴さんがわざわざうそをついたのには、必ず理由があるはずだ。
「それが知りたくてこの話をしたわけじゃないですよね?」
どうしてうそをついたんですか、とは聞かない。
僕は続く展開を予想しながら千鶴さんの回答を待つ。
「今の私の話、何も疑う要素はなかった?」
質問に質問で返された。
これは千鶴さんとの会話ではときどきあることで、こうなると僕が何かしらの有効な回答を出すまでは、僕の質問には答えてもらえない流れだ。
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