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「街の名前とか、結構悩むんだよね」
「実際に存在する地名と同じになってもいいんですよね?」
「もちろん。でも、そことわかるような描写を加えちゃったら、その街のことをちゃんと調べておかないと、そこに住む人たちが読んだときに違和感を与えかねないから、私は避けるようにしてるよ」
いわゆる聖地巡礼みたいなことは、千鶴さんの作品ではできなさそうだ。
千鶴さんの頭の中では、モデルになっている景色があるのかもしれないけれど。
「って、話がそれちゃったね」
この話題をもうちょっと深掘りしてもよかったけれど、千鶴さんが軌道修正を図るのならそれに従うまでだ。
うっかりすると何の話をしていたのか忘れてしまいそうになるのも、千鶴さんとの会話ではよくあることだ。
「さっきの話は前座ってことで、蓮くんにひとつお願いしたいことがあるんだ」
さっきの話というのが何を指しているのかはわかりかねるが、お願いというワードを聞いたらそっちに反応してしまう。
前座ってなんのことだろう。
「なんでしょう? 僕にできることなら」
「ちょっと難しいかもしれないけど、うそをついてほしいんだ」
質問に対して即座に答えが返ってくることも珍しくはない。
ちょっと難しいかも、という前置きがされたのは初めてかもしれない。
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