第1話 引き寄せるものは

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「うそ、ですか? えっと、僕が千鶴さんに、ですよね?」  エイプリルフールの練習じゃあるまいし、どういうことだろう。  何をお願いされたのかはわかったが、その目的はさっぱりだ。 「そう。どんな内容でもいいから、蓮くんのことで私が知らない話をしてほしいの」 「え、どういうことですか? 適当にでたらめを言えばいいってことじゃないですよね?」 「もちろん。事実に基づく話をしてもらって、その中でいくつでもいいからうその内容を散りばめてほしいの」  僕に求められることがより明確になり、改めて難易度の高さがうかがえる。  千鶴さんがそれを見抜く、という企画だろうか。そっちは簡単そうだ。 「えっと、つまり……」 「例えば、学生の頃の部活の話で、蓮くんは主将を務めていて、三年生のときに全国大会で優勝したとか」 「僕は主将じゃないですし、全国大会にも行ってないので、それだとうそばっかりになっちゃいますけど」  僕が学生時代に柔道をやっていたことは前に話してある。  役職の話はしていないが、成績については触れたはず。
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