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「ここは、どこ?」 目を開けると、ガラスのような透明な窓に囲まれた部屋にいた。窓の外には何も見えない。 ただ明るい青空が広がるだけで、地も海も雲さえも見えず、まるで空の孤島にいるかのようだった。 白い服を着た少女は、手をついて立ち上がる。 ピー 電子音が突如鳴った。 「なに?」 その問いに答えるように、どこかから途切れ途切れに電子的な声が聞こえてきた。 『さき・・・すすん・・・そこか・・・出て・・・』 「だれ?」 電子音は答えることなくぷつりと音を閉ざした。 「だれ、かはわかんないけど、とりあえず、ここから、出ればいいんだね。」 少女は何もわからないまま、ただそのことに特段何も感じることもなく、ただゆっくりと目の前に見える扉へ向かう。水色の扉は窓の外の空と同化し、白いドアノブが浮いているように見える。 「ん、開かない。」 鍵がかかっている。何かないかと後ろを振り返ると、その部屋には異質な石像があった。同じ背丈ぐらいの高さの、ただの人が石化したような像だった。 前から見ると、見覚えのある顔をしていた。 「これ、わたし?」 少女は顔をゆがめることもなく、少女自身の石像を見た。足元には何かその題のようなものが書いてある。 『わからないまま朽ちていく少女』 「?よく、わからない。」 ふと何かを思い、少女はその石像の頬に触れた。 「冷たい。」 ガチャリ 向こうの扉の、鍵が開く音がした。 「開いた?」 何がトリガーなのかはわからない。わからないまま、少女はそれを気にも留めず、扉を開け、次の部屋へと足を踏み入れた。
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