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物心ついた頃から凱の父は魏の英雄だった。 大敗を何度となく繰り返した王朝に久しぶりの勝利をもたらした父、翟章は魏を建て直す象徴的な将軍であった。 凱も立派な父親に習いたいと、幼い頃より剣を振り槍を突いて己の武を磨いた。 凱の指南役に就いていた西門獬はその技量に大きな疑問を持っていた。 どう見ても凱は弱い。 もちろんまだ幼い凱にとって武器は重く、速さも大人に勝てるわけがない。 なのに試合っては誰もが手こずりなかなか勝てないのである。 動きが奇抜なわけでもなく、かといって基本に忠実なわけでもない。 指導してもよいが、それだと凱の動きが変わってしまう可能性があり、それは単純に今より弱くなる事になる。 その曖昧な強さに西門獬はかゆい感覚を持った。 「凱は相手の動きがどうみえているのだ?」 「どうって、みたままですが?」 「それはそうだろうが、どうもお前の動きは相手の先を読んで動いているようにも見える」 「師匠、先なんてわかんないですよー」 凱は屈託なく笑いだした。 「それはそうだ…」 「でもなんとなくわかるんです」 「わかる?」 「はい。でもどう言っていいかわかんないから、とりあえず二刀もって好きな方で僕を切ってみて」 そういうと凱は西門獬に木刀を2本渡した。 両手に木刀を持った西門獬は正対する凱に左腕を振るおうとした瞬間、すでに凱は木刀を右に振って西門獬の動きを制した。 「ぼんやりとだけど左腕が動くと直感しました。根拠もなく賭けだけど、これがよく当たるんです」 事もなげに放った言葉に西門獬は更に悩みが深くなった。
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