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「ははは、西門獬ともあろう者が悩んだりするのだな」 その夜、酒に誘われた西門獬は翟章に率直に相談していた。 「しかし、直感だけではもしハズれれば死に直結します。ここは弱くなっても基本的な動きに修正すべきではないかと」 「でもそれにしては違和感があるからワシに相談しておるのだろ?」 「はい、ものすごく判断に悩みます。 凱の天性は素晴らしい事には変わりなく、それを伸ばしてやればいつか誰もかなわない勇者として育つでしょう」 「しかし、翟を後継する者としてはそのような賭け頼りでは困る。 根拠のない勘に頼る長など誰が信用するか」 「その通りだと思います」 「しかし勿体無いと思うなら両方取りをすればいいではないか」 「そんな無責任な事をおっしゃられては困ります。 たぶんですが勘に頼った動きが身にしみれば戦術もまた勘頼りになる恐れがあります。 両方、高みへと登れるほど人間という生き物の性能は高くないと私は思っております」 「凱がその規範からはみ出る存在ではないと?」 「それは…正直わかりません。 もしかしたらそれを越える才能を持っておられるかもしれません。 しかし、現時点ではそれを見極める事は不可能かと」 「ふむ…我が息子ながら悩ましい存在よな。 座学の方はどうだ?」 「それがどうにもよくありません。 物覚えが悪いわけではないのですが、基本と応用になるとどうしても間違いが多く」 「どうしてだと思う?」 「たぶんですが答えありきの基本からの応用は直感を必要としないものなので、凱様の心の中でわかっていても理解できないのではと思っております」 「複雑な奴だ。 でもそれでよい。武はこのまま、座学もそのまま理解できずとも基本を学ばせればよい」 「よろしいのですか?」 「答えは凱自身が出すであろう。 それよりも経験が奴の才をいつか解放してくれるのではないか?」 翟章もはっきりしない表情で西門獬に答えを与えた。
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