一、私立花菱学園内の勢力図

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 もし彼が女性だったら、絶世の美女だっただろう。そのくらい、有り得ない整い方をした美形だった。もちろん、桐椰くんもイケメンだとは思うけれど、雰囲気と第一印象のせいでやや粗暴さが評価の邪魔をする。でも彼は、誠実そうで、真面目そうなのに生真面目そうではなくて、少年らしい遊び心も感じさせる雰囲気を醸し出している。桐椰くんを「人生で会った中で一、二を争うイケメン」と評価したけど、更新された。多分、この人を超えるイケメンに人生で会うことはないだろう。それくらい、完璧なイケメンだ。  思わず緊張して、喉が締め付けられる。そんな私の様子など意にも介さず、彼は白い歯を僅かに見せて笑った。 「初めまして。松隆(まつたか)総二郎(そうじろう)、御三家のリーダーです」 「リーダー……」  そっか、総二郎だから総ってニックネームなんだ……。ついでに“リーダー”ということは御三家は何かのチームなのだろうか。ついでに、その松隆くんが緩く結んでいるネクタイは紺色で(ちなみに桐椰くんはパーカースタイルなのでネクタイをしていない)、私達と同学年であることが分かった。  じっと見つめ返すだけの私に、松隆くんはちょっとだけ苦笑した。 「えーっと、君の名前はなんだっけ?」 「あ、桜坂亜季、です」 「んー、桜坂ね」  私の名前を復唱し「はいはい、覚えました」と頷く。桐椰くんはソファに座り込んでスマホを見ていて、私を連れて来たくせに我関せずだ。 「……あの、これは一体……というか、御三家って一体……」 「簡単に言うと、生徒会の敵対勢力」  松隆くんは不敵に笑った。 「俺達は、生徒会を潰すんだ」  生徒会を潰す……? その言葉に思わず眉を顰めた。 「……何言ってんの? 生徒会役員って、お金持ち集団なんでしょ? そんなの、潰せるわけないじゃん」  先生だって保護者だって、なんなら一般生徒だって、みんな生徒会の味方だ。真正面から挑んだって意味はないし、生徒会の悪行といっても、所詮は一般生徒に対して威張っているだけ。公にしたってなんの意味もない。下手したら揉み消されて転校させられて、がオチのはず。 「まあ確かに、金持ち集団だけど」 「大丈夫、コイツも半端ない金持ちだから」  口を挟んだ桐椰くんと松隆くんとを交互に見れば、松隆くんがクスッと笑う。
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