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「だから桜坂が安全に学校生活を送れるように、俺達が守ってあげる。その代り、桜坂は俺達御三家の仲間だ」
「……仲間になって、なにすればいいの」
「一緒に生徒会を潰してくれればいい」
「……具体的に何をさせるつもりなの」
「さっき言ったろ。男じゃ入れない所に入ってもらうし、男じゃできないことをしてもらうって。あ、怪しいことはさせないから」
それこそ妖しく笑いながら、松隆くんは言った。
「乗る?」
「……でも、御三家にはもう一人駿哉って人もいるんじゃ……」
「駿哉に確認はするけど、桜坂なら大丈夫じゃないかな」
俺達が探していた女子には条件がいくつかあったんだ、と松隆くんは指を一本立ててみせる。
「第一条件は、この学校に来て間もないこと」
「……なんで?」
「生徒会の息がかかってない確率が高いから。一ヶ月過ごして、分かっただろう?」まるで馬鹿にするように松隆くんは笑い「この学園の生徒は、誰も彼も、生徒会役員が学園のトップだと思いこんでる。そんな学校に一年以上浸かったヤツを仲間にしたって無駄だろう?」
生徒会を潰すための、それは合理的な人選だ。
「第二条件は、根性があること。生徒会役員に脅されて簡単に俺達を裏切られちゃたまんないからね。その点、桜坂は生徒会の虐めによく耐えてるみたいだし」
「……まあね。これだけ嫌がらせなんてされたら、いくら握らされても生徒会になんてつかないよ」
「それがつくヤツばっかりだから面白いんだよ」
皮肉気に冷ややかにそう吐き捨てたときの松隆くんの横顔からは、最初の甘い笑顔など消え失せていて──一瞬だけその闇を垣間見てしまった気がして、ぞっと背筋が震えた。
ただ、同時に、脳裏には有希恵が過った。あんなに生徒会から虚仮にされてたというのに、手のひらを返すより簡単に私を見捨てた有希恵。
その事実に対して私が感じていたことが、今になって顔に出てしまったのだと思う。松隆くんは「心当たりあるんだね」と笑った。
「そして、第三条件。御三家との間に生じる対価関係が、御三家にとって大きなコストとならないこと」
対価関係──私は御三家の仲間として働く、その対価として、御三家は私を守る。確かに、松隆財閥を背後に持つ松隆くんがリーダーなのであれば、御三家にとって、私を生徒会から守ることなど造作もないことだろう。そして私は、生徒会から守られさえすれば──平穏な学校生活を送ることさえできれば、充分だ。
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