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生徒会から虐められていない人にとって、御三家に守ってもらえるなんて条件は大しておいしいものではない。それでもって、松隆くんや桐椰くんみたいに見目麗しい男子にお願いなんてされたら「代わりに付き合ってください」なんて言い始める女子がいてもおかしくない。
確かに、私は御三家にとって非常に都合のいい女子らしい。思わず笑ってしまった。
「……うん。私は、ちゃんとこの高校を卒業できれば、それでいいよ」
「だろ? そして、第四条件、胆が据わってること」松隆くんは桐椰くんを顎で示し「遼がオーケー出したってことは、遼にも動じなかったんだろ」
桐椰くん──見た目は絵に描いたようなにヤンキー、不機嫌そうで、横暴さは口にも態度にも表れていて隠す気など微塵もない。そんな桐椰くんを怖がらなかったから、肝が据わっているとでもいうのだろうか?
「動じなかった、ってのは、遼を見ても怖がらなかったってことだけじゃない、変に異性として意識しなかったってことだよ。君は男と友達として接することにきちんと慣れてる」表情だけで私の疑問を読み取り「男三人の御三家の中に、自然に入れる」完璧に払拭してみせる。ああ、本当に、この人は怖い人だ。
「まあ、俺は慣れてないタイプなのかな?」
「……そうですね。松隆くんみたいな人には会ったことないかも、です」
正解だ。こんな短時間で他人を丁寧に分析し、見透かしてしまうような人を、私は知らない。
「そして、第五条件」
私に一歩近づいた松隆くんの指先が、私の眼鏡のブリッジに押し当てられる。バレル型の、薄紫のマーブル模様、プラスチックの眼鏡。彼はニッ、と口角を吊り上げた。
「守り甲斐のある可愛さがあること」
それを聞いた桐椰くんが酷い顔をした。まるでゴミ虫または珍獣を見るかのような目で私を見る。
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