7人が本棚に入れています
本棚に追加
「へっ」
「仮にも男二人が目の前にいるときにスカート半分脱ごうとしてんじゃねーよ!」
「大丈夫だよ、脱がなくても調整でき──」
「そういう問題じゃねーんだよ! お前も普通に見てんじゃねえ」
「分かった分かった」
怒った桐椰くんが松隆くんの胸座を掴み、揃って私に背を向ける。私は気にしないって言ってるのに、意外とピュアだな、あのヤンキー……。
それはさておき、手早くウエストを細くし、スカートの丈を短くしてから「はーい、どうぞー」と合図すると、振り向いた桐椰くんはやっぱり目を丸くする。松隆くんは一層満足そうだ。
「ほーらね、私、スタイルもいいでしょ!」
「すっげー図々しくてムカつくんだけど、コイツ」
苦虫を噛み潰しながらも、否定はしない。うむ、と私も満足気に頷く。
普通に私を見ても、可愛くもなんともないんだと思う。眼鏡は凹レンズだから、眼鏡を外すと目が大きく見える。つまり、二重で大きい目でも、眼鏡をかけると小さく見えてしまう。私の髪は少し癖毛が混ざってるから、結ばずにいるとボリュームが出てぼさぼさだ。胸は平均より大きいから、服によっては寸胴に見えてしまう。でもウエストは細いから、そこを強調すれば凹凸のバランスが整って、スタイルがよく見える。
めちゃくちゃ美少女ってわけじゃない。めちゃくちゃスタイル抜群ってわけじゃない。なんなら身長は発展途上。でも、普段の格好が眼鏡にボサボサ頭に長いスカートに古いシャツ、なんて有様だから、きちんと似合うように整えるだけで、まさに豹変する。
「やっぱり、桜坂はちゃんと自分の使い方を分かってるんだよね」
自分の魅力を最大限に引き出す方法を知っていれば、普通ならその方法を選択するだろう。そこであえて逆の選択をしている私に、松隆くんは意味ありげに口角を釣り上げた。
「理由は聞かないけど、そういう頭の回る子は嫌いじゃないよ」
「お誉めにあずかり光栄です」
「……俺はそういう頭の回る女は好きじゃねーぞ」
「私もヤンキーは好きじゃないから安心していいよ?」
「ぶん殴っていいか、アイツ」
松隆くんが桐椰くんの腕を掴んでおさえるので、あっかんべーとしてみせた。桐椰くんのこめかみには青筋が浮かぶ。
最初のコメントを投稿しよう!