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「というわけで、私そこそこ可愛いから、守り甲斐あるよね!」
「だから図々しいなお前のそのキャラ!」
「まあまあ、遼。でも確かに結構可愛いから、お手柄」
「そんなこと言うとコイツ調子に乗るだろ! 可愛いって思ったから連れてきたみたいな言い方やめろ!」
「ねぇ、普段は今まで通りの格好でいい?」
「桜坂が今まで通りがいいって言うならいいよ。実物が可愛いって分かってれば別にいいし」
「まあ実物は可愛いよね、うんうん」
「マジでうぜーなコイツ。つか、お前ら勝手に話進めてるけど、駿哉がなんて言うかはまだ分からねぇからな?」
さっきから出ている、御三家の三人目だ。松隆くんは「だから駿哉なら問題ないでしょ、興味なさそうだし」なんて失礼なことを説明している。
「ねぇ、その人誰?」
「真面目で堅物で女嫌い」
……問題しかないのでは? というか、ヤンキーと腹黒の次は真面目で堅物で女嫌いとくるとは、もしかして御三家って問題児集団なんじゃ……。
「えーっと」でもそんなことは口には出せないし「ここって、御三家のアジト的なとこでしょ?」「まあ、学校における」「その駿哉くんは来ないの?」桐椰くんの評価が友達への辛口のコメントであることを期待したけど「さあ。試験中だしな、図書室にでも行ってんじゃね」どうやら今日は本人に会えそうにないらしい。
「じゃあ私帰っていい?」
「いいよ。正式に御三家の仲間になったら、帰りも送ってあげる」
ばいばい、とあまりにもあっさり手を振られ──ああ、やっぱり、この人は怖い人だと思い知る。御三家が私を守る条件は、御三家の仲間になること。つまり、こうして突き放すことで、御三家の仲間でもなんでもない私を守るつもりはないと明言してみせた。優しい顔に騙されてはいけない、この人は、感情的な人間とは真逆に位置するひとだ。
だからこそ、その正しさには頷くことしかできない。
「分かった。……最後に、聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「……どんな理由があって、生徒会を潰そうとしてるの?」
最初に聞いたときは、ただの成金同士のいがみ合いだと思った。でも松隆くんほどの人が、そんなくらだないごっこ遊びに本気で挑むのだろうか。
そんな、純粋な疑問だった。それなのに、松隆くんと桐椰くんが、一瞬無表情になった。
ゾク、と、背筋が震える。でも何事もなかったかのように松隆くんは笑顔を作って見せた。
「御三家の仲間になったら、教えてあげる」
……あぁ、本当に、この人は怖いな。はっきりと線を引かれて、色々通り越して笑ってしまった。
仲間になったら生徒会を潰すことに協力することになるのに、潰す理由は仲間になるまで教えない。そんなの契約を結ぶなら論外だ。なんて身勝手で、理不尽な交渉。
「分かった」
それでも私も笑顔を作って見せる。
私は何より、平和に高校生活を終えたかったから。
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