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その考えが表情に出ていたみたいで「あ、違うの、そういうのじゃないと思うよ。生徒会室で会いたいって言ってたし」稲森さんは顔の前で手を横に振ってみせる。
「生徒会室……って、あの入口からして豪華絢爛な……」
「そうそう。だから生徒会室が汚れるようなことはしないんじゃないかなー」
稲森さんは人差し指を口元に当てながら無邪気に言ったけど、そんな言い方に騙されない。私が汚れるのはいいけど生徒会室が汚れるのは困るって……。ただし、だから行っても安全だ。そして行かなかったら何が起こるか……、あんまり考えたくない。まだ御三家の仲間じゃないし、仲間になるかもまだ確定してない。
だから、私はまだ守ってもらえるか分からない。となると、行っておいたほうが安全なのかな。
「……分かった……生徒会室って本校舎の三階だよね?」
「うん。良かったら案内しようかー?」
「そのほうが助かるかも」
「分かったぁ、じゃあ今からでもいい?」
「……大丈夫」
私が御三家の仲間になれるかは「駿哉」くんにかかってるんだけど……、早くしてくれないかな。内心そんな溜息を吐いた。
花菱学園の校舎は全部で五つあって、本校舎は一番南にある。本校舎には理事長室、副理事長室、校長室、とお偉い先生方の部屋が揃ってるのがまず基本。それから応接室がいくつかと、会議室や生徒会室がある。生徒会室がそんな本校舎の三階にあることは知ってたけど、役員じゃないから縁がないし、近寄りたくもない。
本校舎と繋がる二階渡廊下を一緒に歩きながら、稲森さんはそのピンク色の頬に人差し指を当てて見せた。
「でもなんだろうね、蝶乃さんの用事って。前にも梅宮さんが呼び出されたことはあったんだけど」
「え、そうなの?」
「そうだよー。蝶乃さんが誰かを呼び出すなんて珍しいから驚いたんだよね」
……そういえば、なんで有希恵は蝶乃さんの仲間(というか取り巻き? はたまた生徒会役員?)になったんだろう。生徒会役員の仲間になれるかどうかも寄付金次第だとばかり思っていたけれど……有希恵が急に生徒会役員の仲間になれたことを考えればそうとは限らないだろう。
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