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「ねぇ、生徒会役員の……仲間? みたいなのって寄付金少なくてもなれるの? その、有希恵は蝶乃さんに仲間になるように勧誘された、とか」
「あー、そっか。桜坂さんって転校生だから、生徒会の仕組みは知らないんだ」
頷けば、稲森さんは生徒会役員の仕組みを教えてくれた。
生徒会役員は、厳密には四種類いる。ヒエラルキーが高いほうから順番に、正役員、指定役員、希望役員、無名役員。
正役員は生徒会長、副会長など、選挙で指名される役員をさす。どの学校にもいる普通の生徒会役員の役職に就いているのだそうだ。指定役員は、正役員が指定する秘書みたいなもの。仲が良い友達同士や、家同士の付き合いが多いらしい。希望役員はその名の通り希望制。寄付金が多いとなれる。一方、無名役員は、役員とは名ばかりの雑用。その代わり寄付金の多寡どころか有無も関係ない。
稲森さんは「多分、梅宮さんは無名役員だよ」と教えてくれた。
「無名役員はねー、正役員以外でも使えるの。自由に選んで自由に捨てていいよって言われてる」
「いいように使っていいって、なんか下僕みたい」
「あー、そうかも。下僕みたいな感じ」
「……え?」
「生徒会室の掃除とか、役員の手伝いとか、まあもっと簡単にいえばパシリとか? そういうことだけかな、無名役員がやってるの」
稲森さんは無邪気に語るけれど、そんなの、眉を顰めずにはいられない。
「それ……なんかおかしくない? 同じ生徒なのに」
「んー、あたしもよく分からないけど、元々、花菱って、生徒会がすっごい強いじゃん? 生徒会の中でヒエラルキーはあるけどー、無名役員は一応“生徒会”の役員ではあるから、その権力の中には入れるんだよね。基本的に下僕でパシリで、ってなっても、一般生徒より上のヒエラルキーなんだよ。それに生徒会役員のパシリだから生徒会に目を付けられたりしないし」
「安全ってこと?」
「そそ。だから虐められてた子がそのまま虐めっ子付の無名役員になったりとか、虐められる前に無名役員になりたがる子もいるかな。あ、ほら、木之下くんは虐められる前にさっさと無名役員になったんだよ」
「木之下くんもなんだ……」
「見てたら分かるじゃん、赤木くんが結構好き勝手パシってるよ。梅宮さんもそうなんじゃない?」
そっか、有希恵は虐められたくなかったから自分から無名役員になったんだ。木之下くんも生徒会役員にしては妙に腰が低いと思っていたら、そういうわけ。
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