一、私立花菱学園内の勢力図

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「ええ……生徒会役員は校内一五〇位以内なら授業料が四分の一免除されるの。順位が上がればもっと免除率も高くなるわ」  花菱学園の偏差値はそんなに高くないから、そんなの、はっきり言ってちょろい。思いもよらぬいい話に、ごくんと喉を鳴らした。  別に、お金に困っているわけではない。ただ、傍目に優等生と認識されたいし、なおかつできるだけ自分にお金をかけたくないという気持ちがあった。だから、その両方を満たすことができる、こんなにおいしい話は中々ないのだ。  ただ、御三家は生徒会と敵対してるらしいから、生徒会役員になったら御三家の仲間という話は自然消滅することになる。でも、御三家の仲間になるメリットは生徒会役員になることでも得られる。それどころか、優等生という肩書に授業料減免の特典つき。  どっちが得かなんて考えるまでもない。 「……でも、蝶乃さんに何の得があるの? 自分ばっかり得すると怪しい契約みたいに思えてくるんだけど」  問題は、うまい話には大体、いや必ず裏があること。 「そうねー、一応アタシが指名した役員だから、アタシの命令には従ってもらうことになるの。それが私にとってのメリットかな」  ……蝶乃さんの命令? 内容を想像する前になんだか嫌な感じがした。  そしてその予感は的中する。「例えば……」と蝶乃さんは悪戯っぽい笑みを浮かべた。 「梅宮さんをこの学校から追い出せってアタシが言ったら、その命令には必ず従ってもらう。命令違反があるとアタシが判断した場合、指定役員を解任するの。解任後はもちろん一般生徒に戻るし、無名役員以上の役員にはなれない」 「……それって建前で、解任されたら生徒会から目の(かたき)にされて、指定役員になる前に一般生徒として退学に追い込まれるってことはないの?」 「まあ、そういうことのほうが多いかな」  つまり、事実上、私は安寧・お金・肩書きを手に入れて、その対価に蝶乃さんに絶対服従しなきゃいけないってことだ。そんなの冗談じゃない。
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