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「……それなら」
「それから、役員に指名されて断った人は今までいないの。だから桜坂さんがこの話を断ったら、また生徒会規則が追加されることになっちゃうかな」
それは、私がこの話を断ったら、新しく規則を作ってまで私を甚振るということでしょうか。その不穏な言葉に戸惑い、思わず「え、えへへ?」と下手くそで曖昧な愛想笑いを浮かべてしまった。
「そ、その……話自体はありがたいんですけど、なんかこう、考える期間とかないのかなーって」
「即答しなかったのも桜坂さんが初めてだから、どうしようか。会長がオーケーを出せば猶予は与えられるんだけど」
執行猶予という単語が頭に過った。蝶乃さんの笑みがますます不気味に思える。
でも、生徒会役員にならなければ御三家が守ってくれるんだっけ? いや、そのためには駿哉くんの許可が要る。ということは、今ここで蝶乃さんの誘いを断って、更に駿哉くんの許可が下りなかった場合――私の学校生活は終わる。
どうしよう。ここでの選択は間違えられない。
平和が約束される生徒会役員(もれなく特典付)、ただし蝶乃さんに絶対服従の下僕。
同じく平和が約束される御三家、ただし現状加入の可否は未定。
どちらを取るべきか──……。
「そう言えば桜坂さん、最近桐椰くんと一緒にいることがあったみたいだけど、御三家と何か関わりがあるの?」
「え? いや、特にはないです」
今のところ、と心で付け加えたから嘘じゃない。
「そう。もし御三家と何か関わりがあるなら、生徒会役員になった暁にはその関係を断ち切ってもらわないとと思って」
「え? 何で?」
「何でって、御三家は生徒会役員の敵なんだから、当たり前でしょ? あの三人、役員を殴ったり脅迫したりなんてことは日常茶飯事なの。本当に困ってるのよね」
蝶乃さんは悩ましげな溜息をついた。御三家が生徒会役員を目の敵にしてるのはいいとして、気になるのは、御三家のほうが悪者に聞こえるということだ。でも敵だから話を盛ってるんだな、ここは話半分で聞いておこう。
「なるほど……」
「成績がいいからさすがに先生も辞めさせたがらないし、最近は役員にまでファンが出てきたし」
後半から愚痴っぽくなってきた。蝶乃さんはイライラと紅茶のカップを掴む。
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