8人が本棚に入れています
本棚に追加
一、私立花菱学園内の勢力図
――(一)生徒会至上主義――
事の発端は、友達の梅宮有希恵が廊下で肩をぶつけられたことだった。
「ちょっと、有希恵に謝ってよ」
謝りもしないで立ち去ろうとする男子二人組の腕を掴んで呼び止めた。二人は制服の着崩し方もアクセサリーも派手で、不愉快げに私を振り向いた。
「はあ? 何で? 勝手にカバン落としたヤツに、何を謝らないといけないの?」
その時どうしてか、私達の周りにいる生徒はみんな笑っていた。「何、アイツ」「転校生なんだってさ」「あぁ、どうりで」と、クスクス笑いながらよく意味の分からない遣り取りをしていた。何がそんなにおかしいというのだろう。
一体、何が。
「何って……ぶつかって悪かったって謝るくらい」
「悪かった?」せせら笑いながら「俺達が悪いの?」
「い、いいえ!」
「え?」
有希恵は素早く否定した。驚いて有希恵を見つめ返した私とは裏腹に、有希恵は私に見向きもせずに首を激しく横に振った。
「私が勝手にカバンを落としただけです、お騒がせしてすみません……」
「え、ちょっと有希恵、どうしたの……?」
「ほーら、俺達何もしてないじゃん。言いがかりもいいところだよね」
私は目を白黒させたまま、有希恵と男子二人を交互に見つめる。有希恵は鞄を抱きしめて俯いたままで、男子二人はこの状況を楽しむように笑っていた。
「え……、何で……?」
「ちょっと、これ何の騒ぎ?」
誰か、今の状況を説明してほしい──。狼狽していた私の前に明るい声が舞い込んだかと思えば、現れたのは黒髪ストレートロングの美少女――しかもなぜか複数の男子を引き連れていた。まるで執事を連れるお嬢様のようで少したじろいだ。
「あー、蝶乃さん。聞いてくださいよー。なんかコイツが、俺らがわざと肩ぶつけてきたとか言いがかりつけてきて」
ただ、他の人達にとっては見慣れた光景なのか、動じたのは私だけだったし、なんなら男子二人は困ったような顔で彼女──蝶乃さんに訴えかけた。それを聞いた蝶乃さんは顔をしかめる。
最初のコメントを投稿しよう!