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「まあ……とても魅力的な条件が揃ってるよね」
「役員になりたいならなれよ。俺達は他当たる」
「でもあの蝶乃さんに絶対服従でしょ? それはなんだかなー」
でも授業料減免措置ついてるしなー、なんて腕を組んで首も捻る。すると桐椰くんはその整った眉の端を吊り上げた。
「お前、授業料減免狙ってたのか?」
「あ、うん。役員になったら減免措置取って貰えるんでしょ?」
「一般生徒でも減免措置は貰えるぞ」
「え、嘘?」
「ただ、一般生徒だと成績上位十名だけだな。学期が始まる前に減免申請書出して、その学期内試験の平均順位が十位以内になれば授業料が返還されんだよ、順位に応じて。実質授業料減免措置」
桐椰くんは「うちの生徒でそんなん欲しがるヤツいないから、パンフにも小さくしか書いてねーのかな」と言いながら詳しく説明してくれた。成績上位十名って言っても、例によって花菱学園の偏差値はあまり高くないので以下略。授業料減免措置を貰いつつ、蝶乃さんに絶対服従も回避する、そんな都合のいい方法があるなんて。
「あ、やっぱりなしなし! 生徒会役員、ならなくて大丈夫でーす!」
「急に守銭奴キャラ出してくんなよ。つか、そういう話なら駿哉に聞けばいいと思うぞ。アイツ、入学試験から学内試験に模試まで、全部一位だからな。奨学金条件が競合したときのややこしい話とか知ってるだろうし……」
「すごい……もしかして御三家の参謀ですか?」
「いや、真面目で堅物で女嫌い」
前回と一言一句違わぬ形容だ。しかも蝶乃さんによれば「月影くんは役員を脅迫する」とかなんとか……。まあ、本人に会えば分かることかな。
「そっか……性格はともかく優等生が問題児三人組の中にいるんだね……」
「別に、俺達だって問題児じゃねーよ」
「じゃあ桐椰くんと松隆くんは成績上位者の奨学金を貰ってるんですかぁー?」
「それは貰ってねーけど」
「やーい、ばーかばーか!」
「うるせぇな! そういうお前はどうなんだよ!」
「転入して今回が初めての試験でした」
「そーいやそうだったな」
やっと第六校舎内に入れてもらえ、アジトの扉に手をかけると、扉を開けきる前に「遅い」と苛立った声に迎えられた。松隆くんの声じゃない、きっと月影くんだ。おそるおそる、様子をうかがうように扉を開けると、ソファに知らない男子が座っていた。
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