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「残ってるのは生徒会役員専用女子トイレとシャワー室と休憩室だけ。だから女子探してたんだよ。特に今週末の会議が今期初めての会議だからな」
「……今の話は分かったけど、会議資料が必要なのはなんで?」
「絶対に不正があるからだ」
「え?」
松隆くんの代わりに答えたのは月影くんだ。
「君は転校生だから知らないか。正役員会議は毎月あるんだが、その正役員会議で何がされてるかは、俺達、正役員以外の生徒は何も知らない」
「別に聞けば教えてくれるんじゃ……」
「役員会議に参加できるのは正役員だけだ。さすがの俺達も正役員には手を出してない」
ちょっと待って、正役員にはって何。
「正役員以外は手っ取り早く弱味握ったり、脅したりはしてるんだけどね。あ、女子に暴力は振るってないよ、相手が女子のときは脅迫ってより誘惑に近いし」
私の疑問を払拭するかのように松隆くんが答えた。確かに気になったけど、そんな答えは知りたくなかった。弱味を握る? 脅してる? 誘惑もしている? 蝶乃さんの話は盛ってるどころか八掛けだった? そしてもしかして、私、選択を間違えたんじゃ……。
「というわけで、よろしくね桜坂」
その笑顔は、何も知らなければ、まるで恋人に向けられるかのように優しい微笑み。
「もしイヤなら、俺達も他の女子探すし。でもこの間話した条件に当てはまる女子はなかなかいないから、できれば桜坂にやってもらいたいんだ」
でも御三家の所業とそのセリフからすれば、有無を言わさぬ悪魔の笑みにしか見えない。あくまで私は“守られる”立場で、守るか守らないかの選択権は松隆くん達にある。そして、条件にさえ当てはまれば、私は代替可能。
最初は、童話の王子様のモデルになれそうなくらい綺麗で優しそうな人だと思った。でも違った。甘いマスクとは裏腹に、その判断には甘さの欠片もない。
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