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「……ねぇ、あくまで御三家の目的は透冶くんの事件の真相だよね?」
「あぁ」
「だったら生徒会のやることなすことに反抗しなくてもいいんじゃないの?」
「まぁ、生徒会の連中が気に食わないっていうのはあるし。この学校は腐ってるとも思うし」
確かに、それはそうだと思う。一般生徒が、生徒会の味方をせざるを得ない、徹底した生徒会至上主義の空気。今までの私がそうだったけど、きっと、酷くこの学校は息苦しい。
「文化祭はお前にも一役買ってもらうから、そのつもりで」
「はっ、なにそれ」
「文化祭は生徒会の発表があるから、派手にぶち壊してやる」
吊り上る桐椰くんの口角。この数日間、一般生徒に祀り上げられてた私は、その口元から滲み出る性格の悪さに、一種の頼もしさを感じる。
「つか、お前生物行かねぇの?」
「あ、行かなきゃ。……桐椰くんは行かないの?」
「面倒くせー……」
「駄目だよ授業さぼっちゃ! はい立って!」
「お前が戻って来なかったらサボるつもりだったんだけどな」
はぁ、と溜息をつき、桐椰くんは教科書とルーズリーフ数枚とペンケースを持って立ち上がる。
「桐椰くんって成績良くないんでしょ?」
「文句あっか」
「だったら授業出なよ」
「授業出たら成績良くなるのか? だったら授業に出て俺より成績悪いヤツらは救いようのない馬鹿だな」
「なんでそんな言い方するの!」
「つか、結局お前って成績そこそこいいの?」
「結果次第かなぁ」
「ま、どうせ学年一位は駿哉で決まってるけどな」
そんな話をしながら一緒に生物第一教室に行けば、桐椰くんと一緒に入ったせいでみんなの視線が一気に集まった。相変わらず、私の後ろに御三家を見るかのような視線が気持ち悪い。しかも、生物は三組と一緒だから、三組の生徒からも物珍しそうな目で見られる。
席は出席番号順で三人ずつ大きなテーブルで別れているところ、私・大橋さん・桐椰くんがたまたま同じテーブルなのだ。大橋さんの隣に座ると、コソッと耳打ちされた。
「一緒に来たけど、何かあった?」
「たまたま桐椰くんが教室に残ってただけ。何もないよ」
大橋さんの推しメンは月影くんといえど、御三家ならいいみたい。私だって御三家の顔でキャピキャピ騒いでみたい。ただ、御三家の裏の顔を知ってる以上、そんな黄色い声で騒ぐことなんてできないだけ。
「でも御三家が純粋に女子と喋ってるのなんて見ないからー、亜季ちゃんが羨ましい」
大橋さんはうっとりと呟いたけど、残念ながら、私は下僕です。
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