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「何か用って。この桜坂さん、現副会長の誘いを断って、挙句御三家と一緒に生徒会室から会議資料を盗んだんだけど?」
あ、盗んだってバレてる。顔をひきつらせた私の隣で、舞浜さんが「なんですかそれ、どうせでたらめなこと言ってるんですよね?」喧嘩を売る。
「でたらめなんか言うわけないでしょ」
「どうせ、そういうこと言う人に限って何も見てないんですよ」
「何人もの生徒会役員が見たんだけどね?」自分で見ていないのは本当らしく、その人の声の苛立ちが増して「っていうか、今は桜坂さんに話しかけてるんだけど?」
「友達がいちゃもんつけられてんですよ? 庇うのなんて当たり前じゃないですか」
その時の舞浜さんの表情に、思わず自分の表情が歪んでしまうのが分かった。
生徒会役員を睨み付ける目に映ったのは生徒会への敵愾心。そして何より──、生徒会に反抗できる自分の立場への優越感。私を手に入れたから、御三家の仲間になったも同然だと。
“友達なんだから”と、私との関係を告げたその表情が、私と全く関係のないことばかりなんて、なんていう歪さなんだろう。
その歪さは、あまりにも不愉快だった。
「……あんた、私が企画役員だって分かっててそういう態度とってんの?」
企画役員ということは正役員か。正役員の名前は御三家から聞いている、きっとこの人は笛吹さんだ。
なるほどなるほどと呑気に顔を覚えようとする私とは絶妙な温度差で、舞浜さんは勝ち誇ったように、それどころか小馬鹿にした態度で笑い飛ばした。
「分かってますけど? 生徒会役員って、本当にそうやって自分が一番偉いみたいな顔してますよね。そういう先輩こそ、分かってるんですか? 生徒会なんてただの成金集団なんですから、従う理由なんてないですよ」
まるで、舞浜さんが主役で、私は脇役どころか観客のような立ち位置だ。舞浜さんが笛吹さんに喧嘩を売る姿を、ただ眺めているだけ。
この舞浜さんを、御三家は助けてくれるのだろうか。……助けてくれなければいいのに。
笛吹さんは「は?」と露骨に不愉快そうな声を出した。その目は私と舞浜さんを交互に睨み付ける。
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