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「こっちがちょっと多めに見てたら、すぐそうやって調子乗るんだよね。本当、イキッた一般生徒ほどウザいヤツはいないわ」
途端、私と舞浜さん、そして後ろにいた大橋さんと檜山さんまで合わせて、笛吹さんの取り巻き女子五人に囲まれた。取り囲まれた、なんていうと随分陳腐だけれど、実際図式はその通りだ。さすがの舞浜さん達も、怖がるように少し身構えた。
「桜坂さんなんかさあ、生徒会役員に逆らったらどうなるか分かってんでしょ? 分かっててやってんだから、今更なにされたって文句言えないよね?」
いや最初から文句しかありませんでしたけど! なんてツッコミを入れる勇気はさすがにない。笛吹さんは「ほら、校舎の中入ってよ」と私達を第三校舎へとせっついた。生徒会役員がリンチしてるなんてよくある光景なのに、誰かに見つかると困るのだろうか。
第三校舎に入ると、笛吹さんじゃない三年生に引っ張られた。笛吹さんは私達の後ろで「うん、今から。どこにいるの? ……文理教室って三階のほう? ……そう、だったらちょうどいいかな、そのままそこにいて」なんて誰かと電話をしている。一体誰と何の電話をしているのか、思考を巡らせているうちに、押し込むように文理別教室に入れられた。教室内はカーテンが引かれて薄暗い。眩しい明かりを放っているのは、笛吹さんが待機を命じた人達――三人の男子のスマホ。私達が入ると「ああ、来た来た」「マジ人使い荒いよなー」とぶつくさいいながら何かを放って寄越した。パラン、と床に落ちたのは、ロープだ。
薄暗い教室に、ロープ、そして男子三人――。この三つから想像できる最悪の事態が思い浮かび、ドクンと心臓が大きく脈打った。
そろりと半歩後ずさると、背後の笛吹さんにぶつかった。おそるおそる振り返る私を、笛吹さんは笑顔で見下ろし、そっと、そして周到に口を塞ぐ。
「だめじゃん、逃げちゃ。そんなに時間がかかることじゃないし」
その手首を乱暴に掴んで引きはがし、向き直って笛吹さんを睨み付けた。
「……周りに聞こえると困ることをするつもりなんですか」
「困るのはあたしじゃないんじゃない?」
白々しい表情で惚けられ、笛吹さんの目論見が読めてしまった。あの三人の男子は、きっと無名役員だ。彼らのしていることがうっかり表沙汰になったら「無名役員の男子が勝手にやったことです」「生徒会役員に忖度したんだと思います」なんて白を切るつもりなんだろう。
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