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舞浜さん達は困惑した面持ちであたりを見回すだけだ。この期に及んでまだ状況が理解できないらしい。
でも、そんなことはどうでもいい。そんなことよりも、迷わずこの手段をとった笛吹さんのほうが気になる。私に出くわしたのはただの偶然なのに、場の整った空き教室が用意されてるなんてできすぎている。
つまり、笛吹さんはいつもこの方法で一般生徒を脅している。
「これ、他の女子にもしてたんですか」
「桜坂さんには、関係なくない?」
ぎゅっと拳を握りしめた。自分の中に生じた感情が怖さなのか怒りなのか分からなかった。確かに私と関係はない、それでも。
「だって、こんなの、ただの犯罪じゃないですか」
子供のいたずらにしては度が過ぎている。
「知ってる、桜坂さん? 犯罪って、バレて初めて犯罪なの」
もしかしたら、笛吹さんは蝶乃さんよりたちが悪いかもしれない。蝶乃さんが私にしていた嫌がらせは、これに比べたらずっと優しいものだ。
「じゃ、みんなでごゆっくり。あたし達は授業に出ないといけないから」
そのセリフを最後に突き飛ばされ、床に生物の教科書やらノートやらがバラバラッと散らばった。その背後ではピシャリと扉を閉まる音、カチャンと鍵がかかる音、そしてカコンと棒のようなものを扉に立てかけた音が不気味に響く。きっと、教室内から扉を開けられないようにストッパーを置いたのだろう。
「ねぇ亜季ちゃん……これどういうこと?」
大橋さんの声が震えている。
「……どういうこともなにもない」
いくらなんでも、もう何が起こるのか分かってるはずだ。いや、もしかしたら、分かってて目をそらしたいから私に違う答えを求めているのかもしれない。
でも、どっちでもいいや、そんなこと。心底呆れながら、半ば自棄っぱちで笑みを零した。
「ねぇ、話終わった?」
三人の男子は、気怠そうに机や椅子に座ったまま動いていなかった。その中心人物っぽい、少し見た目の派手な男子が億劫そうな溜息を吐く。
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