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「へぇー、じゃあ下僕同士仲良くやろうよ。ま、俺達は一石二鳥なんだけどね」
「……無名役員だから一般生徒より偉いし、命令にかこつけて女の子で遊べるから?」
「そういうこと」
視界の隅に映る三人の表情がそこで変わった。さすがに薄々気付いてはいたのだろうけど、現実に聞かされて危機感でも芽生えたのだろうか。
三人が声にならない悲鳴を上げる。舞浜さんは突進しそうな勢いで扉に向かい、必死にそれを引く。開くわけがないことくらい分かっているはずなのに、馬鹿だな。
檜山さんと大橋さんに目を向けた。檜山さんが大橋さんを縛るように催促され、おそるおそる腕にロープをかけている。友達同士で縛らせることで、一方を共犯者にして、この件を口外させないようにする。本当に、吐き気がするほど慣れた手口だ。
……こうして冷静に呑気に観察して考えている私も、別に、御三家に助けてもらえるって決まってるわけじゃないんだけど。
「友達が心配?」
「ううん、友達じゃないよ」
「ちょっと亜季!?」
即答した私に、舞浜さんが愕然として私の名前を呼ぶ。
私は、舞浜さんの名前も知らない。
目の前の男子は楽しそうに高笑いした。ハハハハハ、としか表現しようのない声だけれど、筆舌に尽くしがたい、その表情と同じ下劣さに満ちていた。
「なるほどね、御三家の姫は御三家と同類ってわけだ」
確かに、ここで私が舞浜さん達を心配するようなお人好しだったら、御三家は選ばなかったかもしれない。
「いいね、俺はそういう女子も結構好きよ」
そしてきっと、大人しくやられるような子も、御三家は選ばないだろう。
両腕で掴んだ相手の腕を支えにして、彼の腹部を思い切り蹴り飛ばした。相手は「うぇっ」と呻きながら私の首を手放した。
「げほっ……、はぁ……」
首をさすりながら咳き込んでいると、蹴った相手が背後の机に手をつきながら「いってぇ……」と腹部をさするのが見えた。彼の仲間が「おいヒロッ、大丈夫か?」なんて駆け寄るのが聞こえる。
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