二、御三家と下僕の契約事項、注意書き

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「舞浜さん達は御三家と関係ないから守るつもりはないっていうのを言いたくて、私達が教室に閉じ込められてから暫く待ってたんだよね?」 「どうしてそう思う?」 「そもそもの疑問は、私が文理教室に閉じ込められたことに、なんで松隆くんが気付いてくれたんだろうってこと」  同じクラスの桐椰くんはともかく、松隆くんが私の不在に気付く機会はないはずだ。 「考えられる選択肢は、単純に三つだよね。そのうちの二つは、桐椰くんと月影くんのどっちかが私がいないって気付いてくれて、それを松隆くんに連絡してくれた可能性」  しかし、桐椰くんに聞いた可能性は限りなく低い。私の不在からリンチを想定したとしても、あの桐椰くんが(おく)するはずがないのだから。 「桐椰くんなら、わざわざ松隆くんに連絡して、松隆くんに私を探させる必要なんてない」  ただ、私達がいる場所を探すのに手間取ってしまった可能性はある。 「私が文理教室にいるって分からなかったんだとしたら、御三家内で――きっと御三家のグループLINEとかあるよね、そこに情報を共有して、みんなで探してくれるよね。――それが私と御三家の契約だから」  契約という言葉を聞いた松隆くんの目が面白そうに煌めき、肯定する。 「でも、松隆くんが二人に連絡を取る気配はない。ってことは、私の居場所が分からないなんてことにはなってなかったんだよね」  文理教室に入ってくる直前に連絡をした可能性もあるけれど、もし居場所が分からなくて探していたのだとしたら、そんな悠長なことをするのは不自然だ。その意味ではご丁寧に扉をノックしていたことも、この可能性を消す。 「つまり、桐椰くんが松隆くんに連絡した可能性はない」  次に、月影くんに聞いた場合を考える。 「月影くんは、きっと自分じゃ来ないから、二人に連絡する。その意味で、月影くんに聞いた可能性は消えない」  そして、月影くんが気付いたのだとしたら、それは私と舞浜さん達が連れていかれる様子を目撃する以外にない。ただ、あの優等生の月影くんが授業をサボってでもいない限り、目撃できるのは六限目が始まるより前だけだ。
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