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でも最近の一般生徒は勘違いをしている。御三家は生徒会の敵対勢力で、一般生徒を生徒会から守ってくれるのだと。前者に関しては都合がよくても、後者に関してはあんまり調子に乗られても厄介事が増えるだけで迷惑だ。だから、あくまでも守るのは私だけなのだと示すために、私が襲われる直前までは来なかった。
ただ、私を守るのはついでとはいえ契約には変わりない。だから、私は襲われてはいない。
それは、御三家のスタンスを維持しつつ、私との契約を守る、ギリギリのライン。もし私が御三家の立場でも、その見極めは同じになるだろう。だから松隆くんを否定することはできない。
「でも、桜坂が殴られるのを黙って聞いてたのは悪かった。本来なら、桜坂に指一本触れさせるべきじゃなかった。その点は謝るよ」
それなのに、一切誤魔化すことなく、松隆くんは頭を下げてくれた。彼は、酷く誠実で、不誠実だ。
「ハイエナの駆除が終わったっていうのもあるけど、これからはこんなことはしない。桜坂に囮になってほしいと頼むことはあると思うけど、それは頼むという形をとる」
「……これを理由に、私が御三家に協力しないって言ったら?」
「それは困る。俺達には桜坂が必要だ」
「その割には随分な扱いじゃん。もし私が抵抗しなかったら、さっさと乱暴されちゃってたかもよ」
「悪いけど、それはないと思ってた」
顔を上げた松隆くんは、今度はなにかを企むような笑みを浮かべていた。
「黙ってやられるような、弱い女子じゃないだろ、桜坂は」
「……なにを根拠に」
「桜坂が、あの幕張匠の元カノだって噂を聞いた」
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