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ついてないなあ、なんてさっきとは別の溜息を吐きながら、ゴミ袋をゴミ箱に放り込んだ。
「お前、生徒会に虐められてんだ?」
せせら笑いが見えるような口ぶりに、しかめっ面で振り向いた。桐椰くんはポケットに手を突っ込んで不敵に口角を吊り上げている。
「図星?」
「……だったら何」
「なんで今更生徒会に逆らった?」
「……知らなかったから。転校してきたばっかりって、さっき話したじゃん」
「あぁ、なるほどな。で、生徒会に虐められてんのにまだ学校きてんの?」
「……そうだけど」
「ふぅん」
大変だなとも、馬鹿だなとも言わない。次の言葉を口にしない彼に怪訝な顔を向け、暗に続きを促すけれど、説明してくれる気配はない。ただ、その表情はどこか満足げだった。
そして、教室へ向かう途中で気が付いた。何やら先程から周囲の視線を感じる。もちろんこの三週間もそれは感じてたけれど「あの子、生徒会に逆らったんだって。馬鹿だよねー」といった類の視線だった。
それが今日は違う……。おそるおそる桐椰くんを見上げた。
「……あの、桐椰くんは、有名人なの?」
「あ? あぁ、有名だよ。つか、二年が始まって一ヶ月以上経つのに、何で俺のこと知らないわけ?」
確かに教室の机は撤去されてたかもしれねーけど、と付け加えられて、そういえばと教室の風景を思い浮かべる。停学でずっと休んでただけってことは、空の席があってもいいはずなのに……空いてる席なんて、うちのクラスにはなかった。
もしかしてこの人も虐められてた? やっぱり不登校? お前の席ねーから!なんて言われちゃった?
私の仲間なのかも、と憐れみの目を向けていると「失礼な勘違いしてねーか、お前」と鼻で笑われた。
「言っただろ、俺はお前とは違うんだよ。まあ、そのうちそうじゃなくなるかもしれないけど」
「……何言ってるのかよく分からないけど。どうして有名なの?」
私みたいに、生徒会役員に目の敵にされている生徒は有名だ。下手に親切にすると生徒会役員に睨まれるし。でも“私とは違う”というのは……。
ただただ眉間に皺を寄せる私に、桐椰くんは、くっと口角を吊り上げた。
「そのうち分かるだろーぜ?」
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