二、御三家と下僕の契約事項、注意書き

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「……ところで、学校で三年生にあんなことして、停学とかにならないの? 大丈夫?」 「さぁ、大丈夫じゃない? 今まではなったことないし」  今までも三年生に殴る蹴るの暴行を加えていたのだろうか? 怖くて聞くことはできなかった。 「そもそも、金持ってたら手を出されないのは生徒会が証明してるから、俺もまた(しか)りだし」 「嫌なヤツですね、松隆くん」 「俺の家、寄付も何もしてないけどね」  寄付も何もなくても、背後に財閥が控えてるだけで恐ろしいってことだろうな。 「あれ、でも桐椰くんって停学になってなかったっけ?」 「あれは先生の目の前でやっちゃったから、さすがに看過されなくてね。普段は俺と一緒にいるってことが免罪符になってるんだけど」  使い方が正しすぎる“免罪符”。本当にお金で買ってる……。 「で、桜坂、その眼鏡どうする? もしかしなくても、半分俺のせいだよね?」  少しだけばつの悪そうな顔をされて「いやあー……」と返事に困ってしまった。確かに、松隆くんがなにもしなければ(ゆが)むことはなかっただろうけど、そんなことで松隆くんを責めるつもりはない。 「桜坂が気にしないなら俺が弁償するけど」 「え、いいよ別に。あ、いいっていうのは弁償しなくていいって意味ね。もとはといえば生徒会のせいだし」 「そういう意味ならなおさら俺がするかな。アイツらは無名役員だし。相手が笛吹なら微々たる出費をさせたけど」  金出さないだろうから話をするだけ面倒だ、と松隆くんは腕を組んで溜息を吐いた。無名役員なら弁償させないってことは、やっぱり御三家は一般生徒の味方の側面もあるのかな。 「松隆くん、一般生徒とか無名役員には優しいんだね!」 「カスでも数いればいつか何かの役には立つからね」  涼しい表情とあくどいセリフに私の笑顔は凍った。前言撤回、御三家の辞書に情けはない。  それはさておき、と松隆くんは長い足を投げ出すようにしてソファの背にもたれた。
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