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「……桐椰くん」
「何だよ」
「これは新手の虐めだと思います!」
「新手じゃねーだろベタだろ」
「うっ……」
「まぁハブってくれるならありがてぇじゃん。俺らは俺らがしたいことに専念できるってことで」
「桐椰くん実はポジティブですか」
「このクラスの活動に興味がないだけ」
打てば響くような屁理屈。ああいえばこういう。少し悔しい気分になって、伏せた桐椰くんの金髪を引っ張る。
……すこし、”彼”に似ていた。
「……なんだよ」
不機嫌そうに顔を上げた桐椰くんに落胆して、それでも表情には出さず、別の感情を浮かべて見せた。
「だってー、桐椰くん私より成績悪いくせに偉そうだもん。ねぇねぇ、何番だったの? 教えて教えて? 笑ってあげるから」
「一七番」
「意外といいじゃん! この似非ヤンキー!!」
でも、そっか、先生が甘くなる条件はお金持ち若しくは成績優秀。笛吹さん事件で松隆くんがしたことも、本当は暴力沙汰。それでもって、相手は無名役員といえど生徒会役員。本当なら、先生に何か言われるはずなのに、松隆くんは何も言われなかった。それは松隆くんがお金持ちだから。それと同じだ。
「だからこんなに素行悪くても怒られないんだ……」
「おいコラ殴るぞ」
「あ、やめて、予備動作に入らないで」
そのとき、スマホの振動音が聞こえた。私のものではない。桐椰くんがポケットからスマホを取り出し、はぁー、と重い溜息をつく。
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